ZBrush User Interview

STRANGE FREAK DESIGNS「古谷尚人」

このインタビューについて

今回インタビューを行わせていただきますのは、STRANGE FREAK DESIGNSで長年シルバーアクセサリーの制作をし、2015年からZBrushで制作を行っている古谷尚人様です。今回は普段制作しているシルバーの制作工程から、作品制作にいたるインスピレーションまで、詳細を伺いたいと思います!

インタビューをお受けいただきありがとうございます!

もしよろしければ自己紹介をお願いします。

古谷尚人:

古谷尚人(ふるやなおと 1978.4.19生まれ O型) 東京工芸大学 デザイン学科 2001年卒業

大学4年(2000年)在籍中に、「STRANGE FREAK DESIGNS」を立ち上げ、ストフリを愛称に活動開始、22年目となります。

メーカーワークでは自社製品の制作を主体に、コラボやOEM(頼まれ案件)による作品を手掛けています。

2007年に千葉県に工房 兼 ショップ「Gallery S.F.D」を経て、2014年より東京都台東区にセレクトショップ「SILVER GEEKS」をオープン、国内のシルバーメーカーを取り扱っています。私と店長、制作スタッフ1名の3人で活動中。

シルバーアクセサリーが出来上がる流れは、
3Dモデリング→ 出力→ 鋳造(業者に依頼)→ 仕上げ(1点物 / マスター原型)→ 複製ゴム型作成(業者に依頼)→ 複製仕上げ(製品) となります。

2000年~2015年夏までは、「モデリング~出力」に相当する部分を、手作業メインでワックス樹脂を彫刻していました。なんだかんだで、2015年秋より、ZBrush4R7)を開始!

SILVER GEEKS / STRANGE FREAK DESIGNS

東京都 台東区 小島1-16-5 松井ビル
2F
(本社・工房)、1FSILVER GEEKS)、TEL/FAX 03-6754-7589


https://www.stfreak.com/main/index.html
https://www.stfreak.com/geeks/index.html

読者の方に、もしよろしければ作品数点を紹介いただけますか?

古谷尚人:
蛇の鱗を表現したリング

ボディをローポリで作った蛇を、IMM*でカーブに沿って走らせる方法です。
カーブのひき方も何通りかありますが、この時はフリーハンドで引いて、直しました。 Zスフィア を使ってもいいと思います。

普及している3Dプリンターは、下側の出力が苦手なので、造形時に出力方向(捨て面)を意識するといいと思います。

蛇の鱗をどう表現するか、何通りかあり、模索には色々苦労しましたが、そのうちの一つの作り方です。ボディをローポリで作った蛇を、IMMでカーブに沿って走らせる方法です。 (出力も一つの壁ですが)

*IMM = インサートマルチメッシュ : 登録したメッシュを好きなタイミングで挿入したり、カーブに沿って繰り返すことができる機能です。

古谷尚人:
アリゲーターの鱗リング

差分メッシュ作成を使ったパーツの分割を活用しました。

はめこみたいパーツをマスク等で切り出す → StoreMT(*モーフターゲット格納) → 下に数ミリ移動(少し縮めてもいい) → 平らにする → Create Difference Mesh(*差分メッシュ作成) でメッシュ化する(法線が裏返ってるので、反転する) 複製したら、Inflate(膨張)を+5~10くらいしてくり抜く

※ 鋳造時や、複製時にリングボディの方が縮み率が大きいのでパーツが入りにくいことがあります。パーツのすり合わせが必要だったり、ゆる過ぎてもダメなので、注意が必要です。

*モーフターゲット = データの変形前の状態を登録し、変形後の差を用いて様々な可能ができる機能です。

**差分メッシュ作成 = モーフターゲットで登録したメッシュと、登録後変形した差から厚みを作成する機能です。

 

古谷尚人:
ネズミの頭骨ペンダント

既存の過去のモデルを3Dスキャナーの、SHINING 3D Einscan-SP を使用しスキャン、サイズを縮めました。 画像左がスキャンした状態。歪みが目立つので大胆にレタッチを入れました。ディテールはボケているので、シャープにします。

元々立体で存在しているモデルを、スキャニングからレタッチして製品化したもの スキャンすると形の歪みが気になってしまい、レタッチすると治したくなりますね。

古谷尚人:
Nachoさんとのコラボリング

画像左が元のプレーンなスカル

ここに、コラボレーションを行ったNACHOさんが加筆してくれました。

コラボで加筆するうえで、相手の持ち味を崩しすぎないというのは大事だと思いました。とくに何も言わなくても、そう対応してくれたNachoさんは流石です。

普段どのように制作しているのでしょうか?
大まかな工程を紹介できますか?

クライアントなどから依頼を受ける場合にはどのようなタイミングで監修を受けるのでしょうか?

古谷尚人:

基本的にはその時閃いたものや、自分の中で旬のモチーフを作っています。

オリジナルワーク

ざっくりイメージをまとめたら、モデリングに入りますが、出力/レタッチを3回ぐらい経て、4回目ぐらいで完成となります。

出力したものにアナログ作業で加工を加えたり、鋳造してから手を加える事もあります。

お客様カスタム依頼

お客様も色々で、言葉でイメージを聞いたり、イラストを描いてきたり、近しい他者の作品を見せられたりします。自社のモデルがベースにある場合は、それに加筆するアレンジをし、完全特注の場合には、フルスクラッチで制作します。

9割ぐらい出来たかな、という段階で画像にて確認(監修)を取りますKeyshotのレンダー画像を見せると皆さん喜んでくれますね。細かい指示のあるお客様はさらに踏み込んで直します。OK後、出力に向けたパーツの整合性や、裏抜きをして、データは完成です。

OEMの場合

具体的なデザインがある場合から、簡単な条件からのお任せなど、ケースは様々ですが、ご依頼ベースで進めて、途中で悩んだり、確認判断が必要になった段階で、CGで監修を受けます。WFのように、指定の角度でキャプチャーを取るクライアントさんもいます。必要ならモックを出して、確認してもらいます。

既存のペンダント(右上)をベンドしてバングルに沿わせました。 バングルの内輪は、シリンダーでブーリアンします。
リング類も基本的に希望の号数シリンダーで抜きます。 円を崩さないように作るのは、労力の無駄です。

ウェブデザイナーの経歴を持つとのことですが、どのような経緯で、いつ頃からシルバー制作するようになりましたか?

また、デジタルを始めるきっかけは何だったのでしょうか?

古谷尚人:

高校時代(1996年前後)、ジュラシックパークやターミネーター2に感化され、将来は映像系か、ゲーム系でCGアーティストになりたかったのです。大学ではそれっぽい学科に進んだのですが、授業がDos(情報処理)から始まり、なんだこれ・・・と愕然としました。その後もCGは独学でしか学べないと知り、当時はLight waveや3dstudio Maxなどポリゴンモデリングのソフトがありましたが、ソフトは100万円を超える高額で買えず、縁がありませんでした。

htmlの素養は仲間と遊びながら習得しました。この頃はインターネット創世記で、htmlもまだテキストコーディングでいける時期でした。Javascript や、Perlcgiなんかもいじっていました。

 

4年生(2000年)になる頃、先輩から彫金*ができる事を聞き、学内の設備で作り始めたことで、彫金人生が始まります。
CG
を学ぶチャンスはなかったのですが、“自分の手で触れる”クリーチャーを作るのもいいなとなり、ドはまり。ほどなく、屋号としてストレンジフリークデザインスを立ち上げます。この頃ストフリのHPも立ち上げ、数年はメールベースで通販がチラホラ来る程度でした。

*ロストワックス=樹脂彫刻系の作り方

 

就職活動ではジュエリー会社のデザイナーになろうと応募しましたが、就職氷河期の2001年、専門学校出身でもない私の入社は叶わず、“インディーズブランド”でやるか、となりました。卒業後いきなりシルバーで食べていけるわけもなく、“とりあえず“ 派遣社員でWEBデザイナーを始めました。当時のハードルはさほど高くなく、時給も1800円だったので結構稼げました。

働きながら、帰宅後に制作という活動をつづける中、先輩に助けられながらも、2005年に大手ショップさんと取引契約が決まり、売り上げがぐっと伸びました。これを機に派遣社員をやめ独立。20071月に、千葉県に工房兼ショップを出します。2014年、震災のダメージが改善してきたあたりで、台東区に移転、現「SILVER GEEKS」をオープンさせます。

デジタルへのきっかけ

シルバー業界では、古くはCADソフトのライノセラスが有名でした。

データからのCNCでワックス切削 → 鋳造 というのが主な流れです。かしながら、私はドクロや動物のような柔らかいデザインのものが作りたくて、ライノでは難しいなと思っていて、長いことやろうと思いませんでした。

という背景のなか、たしか2015年頃からワンフェスで、ZBrushのブースが気になるようになり、同時に3Dプリンターの向上と低価格化に驚かされました。ここで気が付いたことがきっかけとなり、ついに2015年7月ワンフェスでZBrushを触る(体験ワークショップ)に至りました。

このソフトはポリゴンモデリングじゃない事や、価格も安いことが背中を押し、「やるなら、いよいよ今だな」と強く意識しました。学生時代にやってみたかったCGモデリングに37歳にして再開したわけです(笑)

ワンダーフェスティバル後、とあるZBrushセミナーを週1回3か月受けましたが、今思えばあまり内容は良くなかったです・・・。

受講後は、藤縄さん、榊さんの本を必死で読み解き、和田さんのDVDを見たり、成川さんやZBrushCentral、Facebookのコミュニティなどで助けてもらいました。ZBrush ユーザーの方々の作品集もたくさん持ってます。

最近は、もう少しCG系の技術があれば、もっと表現の幅が広がるなーと感じています。

義眼(宝石など)は裏からセットし、裏ぶた板を作り、4本爪で留めます

シルバーアクセを作り始めるきっかけとなった作品や、アーティストなどはいますか?

古谷尚人:

シルバーブランドですと、クレイジーピッグや、JAP工房さん(ガンダム・エイリアン・スターウォーズなどのキャラクターリング)でしょうか。私が始めた2000年頃はシルバーアクセの本も多く、業界にはたくさんの作品があふれ、活気がありました。

アーティストだと、HR Gigerや韮澤さん、竹谷さんをはじめとする造形作家さんの作品は大好きです。

いろいろな方の作品集も集めてきました。実は2007年頃に、小谷元彦さんという芸術家の作品「New Born」を見ました。その頃は3Dプリンタ―の事はSF映画の中の話くらいに思っていたのですが、デジタルスカルプターの先駆けだったのだなあと感慨深いです。今見ても素晴らしい作品です。

少し前に竹谷さんと対談されていました。(いま読み返したら、小谷さんZBrush ユーザーですね)

工房内でのデジタル/アナログの使用率はどの程度でしょうか?

業界内では体感どの程度でしょうか?

古谷尚人:

私の場合デジタルに着手した2015年からは、“原型の立ち上げ”は100%デジタルになりました。
出力後のプリント物や、鋳造後のシルバー原型には手作業が加わる感じですが、これは旧来と変わりないですね。カスタムアレンジの場合には、今までは複製ワックスを加工していましたが、これも使い勝手の良いものではなく、今ではデジタルベースでのカスタムがメインで、古いモデルはスキャニングして加工することもあります。

業界に感じる部分では、レディース系ジュエリーや、企業メーカーさんではライノや3Design、一部でZBrushが見られますが、個人規模のメーカーさんは、ほぼ手作業でやられている方が多い印象です。

最近は若い子にはチラホラ見かけますね。この5年はフィギュア業界もどんどんデジタル化してきていますが、メンズシルバー界隈はどうでしょうね。PCが苦手だったり、設備投資も負担になるので、腰は重いかもしれませんね。

ルース(宝石)をスキャニングして、実寸のサイズを参考に、ペンダントを制作しました。少し膨張したものでブーリアンします。

アナログの魅力、デジタルの魅力はそれぞれいいところがあると思いますが、どうお考えでしょうか?

古谷尚人:

僕が言うまでもありませんが、

アナログ

メリット ― 指先や肉眼で感じる実体感、手仕事によるブレやぬくもり、個人作家向き

デメリット ― 修正が大変、ゆがみが気になる、カチッとした作業に限界がある

デジタル

メリット ―正確な設計(左右対称、メカニック、文字、ロゴ)、修正・変更の容易さ、大きさ違いなど展開のしやすさ、直感的な構図取り、カチっとした造形では業者に頼む部分も自分だけで完結できる、商業原型向き、ワックス樹脂の使いにくさの部分が無い

デメリット ―出力した際の違和感、手の方が早い(安い)場合もある、正確すぎて味気ない
設備・材料へのコスト、出力や機器のトラブル、鋳造(レジン)の問題、やりすぎ造形になってしまう

デジタル/アナログ、それぞれの良点を組み合わせ、欠点はしっかりふまえて制作する用に注意しています。

個人的には、制作中の総合的なストレスはデジタルの方が少ないです。私には、手癖ゆえの造形の歪みを治す行為が最大のストレスでした。
直感的に手早く構図を作っていけるところが楽しいです。その反面、作業が進んでくると、画面の中は“触れない”、“目の前にない”というのが、物体感や魅力をとらえにくく、最大のデメリットだと感じます。出力するとイメージと違うことが結構あり、結果、何度か出力を繰り返します。また、左右対称のままだと違和感があるので、絶妙に崩す、というアレンジを加えます。

手仕事で早い人の素晴らしさを理解できますし、手仕事ゆえのぬくもりが出ます。表現によってはデジタルだと大変なものもあり、手仕事一発の方が早いことがあります。また個人発信の作品では、ある程度の技術域に達している人は、誰かの許可を得なくても完成を見出せるので、手仕事に分があるように思います。OEMや商業原型では良い悪いとは別に3者の監修許可が必要になり、修正の容易さや、正確性を汲むと、デジタルの方が向いていると思います。

正確という点では、カッチリしたものをその通りに作れるので、デジタルならではだと思います。メカモノ以外にも、パーツ同士の勘合(やブーリアン)はワックス樹脂でやるのは難易度の高い作業です。文字やロゴの扱いも、業者を介することなく“自分のところで原型が完結できる“部分があり、メリットだと感じています。

アナログと、デジタルの両方の作り方を経験し、総合的に振り返って、いま私がチョイスしているのはデジタル造形です。一番の理由は楽しさと、ストレスの無さです。

WFにも参加をし、過去にもゲーム/漫画作品とのコラボなどがあり、サブカルチャーに影響を受けていると思いますが、どのような要素を取り入れていますか?

古谷尚人:

わりと子供の頃に触れた漫画が多いですね。寄生獣や、デビルマン、ベルセルクは学生時代からですね。
SF
映画やそれ系の漫画、造形アーティストの作品が大好きです。メカ系よりは、生もの系が好きです(笑)

他人の作品はなるべくたくさん見ようと考えています。観てきた(インプットした)ものを忘れた頃に自分の中に残ってるのものが、自分が受け取れた「カッコイイ」の要素じゃないかと思っています。フェチといいますか。

内面性だと、ダークヒーロー系が好きですね。好きなキャラを作ってみたい、というのがコラボに取り掛かる原点です。

クトゥルフをイメージしたカスタムリング。
左)鏡面ベースにイカの目を持ち、右)ウニの表皮を持つブツブツとしたキャラ
基本的な構図は同じで、フェイス部分のテクスチャを変えています。

どのようなブラシを普段お使いですか?お気に入りの5つのブラシはありますか?

古谷尚人:

Move、ZModelerを除くと・・・

ClayBuildup がダントツ、少し弱めでデッサンぽく盛って、スムーズが多いです
Hpolish / Flatten
シルバーの面(エッジ)を出すのに使います
Standard
 ぼかして盛ったり、ソフトにへこませたり、ぬくもりを加えるのに使います
Slash / DamStandard
 Intensity弱めて、スジ彫りですね

 

最近好きなのは MoveInfiniteDepthですね。

スカルにゴールドの星が張り付いたデザイン
星をローポリで作成、別パーツで鋳造、ロウ付けします。
真ん中には宝石が入ります。

これからシルバーなどを制作したい人におすすめの本、また紹介したいサイト、アーティストなどはいますか?

 

古谷尚人:

Tomasさんや、Nachoさんは目標に良いと思いますが、レベルが高すぎれば、Instagramの海外ZBrushジュエラーがけっこういますのでフォローすると面白いかもです。

本は先ほどのものがいいですが、古いものはあまり参考にならないですね。(4R7頃の少し古めの海外の本が多いので。)また3dstudio MaxMayaMariを使っている本もハードル高いですね。(できればZBrushで完結してくれるのが望ましいですね。)シルバーに狭めず、岡田さんや森田さんなど、ハイレベルなZBrushユーザーの作品を見るのがいいと思います。

パーツごとに分けて制作
リングボディ、ウイング、コアメタル の3層構造
透かしを効かせた表現ができます。

普段シルバーアクセを制作する上で、どのような作品、映画、音楽、資料などを見聞きしていますか?

 

古谷尚人:

私に限れば、モンスターやクリーチャー系の映画はよく見ます。モンハンや、ダークソウルもプレイしたいんですが、”そんな時間があるなら制作しないと” という強迫観念に呪われていて、ゲームはやれません。子供もいますし(笑)
動物や虫の図鑑や写真集は集めていますし、モチーフが明確な時はネットでも色々収集します。

 

現在個人的に注目しているアーティストなどはいますか?

 

古谷尚人:

虫等をモチーフにしている海外のアーティストの、Sazen Leeさんですかね。ドンズバですごく好きです。元のモチーフのデフォルメの仕方、好きの魅せ方、構図もダイナミックで、とにかくカッコいいと思います。天性の素質を感じます。

 

目を留める部分をシリンダーでブーリアン。 シリンダーの角度(目玉が向く方向)や、爪の位置/数に注意します。

どのような作品を将来的に制作したいですか?

 

古谷尚人:

生物がコンセプトにあるので、これからもその方向で制作していきます。ストフリっぽいね~と言われる独自の世界観をもっと攻めていければと思って、日々取り組んでいきます。これはアナログだったとしても同じテーマです。またジュエリー以外にもオブジェ的なものも作りたいです。

 

デジアナミックスによるコラボ作品

上段の龍の指輪は、別ブランド(dualflow)の作品になります。

 スキャニングした龍と、ストフリのスカルリングをミックスしました。

龍はディテールのボケをレタッチ(中段)しています。
スカルリングを侍の甲冑風にアレンジして完成。

 このコラボ作品は、dualflowの許可のもと3Dスキャニングしたものです。許可なく他者の作品をスキャンする行為は知的財産権の侵害となる可能性があります。

先日、海外のZBrush ジュエリー系アーティストのNachoさんとのコラボがありましたが、どのような経緯でコラボに至ったのでしょう?

また、コラボにより得た知見や、制作秘話などありましたらご紹介ください。

古谷尚人:

2018年ごろ、facebookに作品を投稿していた頃、メッセージをもらいました。

Nacho Riesco Gostanza

Hey, I love your creations, I’m wonder if would you like to make a collaboration? Would be cool if we develop a design together and you can craft it afterwards, you could sell it under your store and if I have some requests  can redirect them to you, I don’t want to make any bussines, just to have fun during the design process and get the pleasure to promote the job at your side.

最初は、”なんだか怪しいし、お金払わなきゃいけないかな” – なんて思ったのですが、彼は本当に善意でコラボしてくれました。

彼はアーティストとしても表現に味を持っていて、私のプレーンなスカルに見事なディテールを加筆してくれました。今ならもっといろいろやり返せそうですが、このころはまだ手先がおぼつかない時期だったので、彼のディテールを整える程度で製品にしました。

未だデジタルでコラボができたのは彼しかいません。手仕事の場合、味や趣きは出しやすいのですが、デジタルの場合は、分かりやすさやアイコン的な表現も必要なので、ここは今も自分の課題だなと思っています。

始めたてのアーティストにアドバイスするとしたらなんでしょうか?

古谷尚人:

これは作家全般にも言えると思いますが、とにかく”どんどん作る”ではないでしょうか。

その際、途中であきらめず、自分なりに必ず終了まで仕上げるという事。

ZBrushは細かな技術が多いので、いま自分が知っている技術でどう作り上げるか、のちに別の手法が見つかることもありますが、今の自分の技術でどう表現し完成までもっていけるか、知恵を絞りだしたり、技を組み合わせたり考えるのもZBrushの面白い所だと思います。

”次に作るものは前回より良いものを、という心構え”で。

 

アクセサリーは造形する体積も小さいので、デジタルクリエイションを始めるには良いアイテムだと思います。

(緻密に造形しすぎても、細かすぎて見えなかったり、プリンターが再現できないレベルまで造形する必要がありません)

が、彫金術のイロハが別途必要なので、それらの知識を持って作る必要があります。これはフィギュアでも同じで、粘土の扱いやガレキの制作手順は知っていた方がいいと思います。分割の工夫や、複製型が取れるのか、造形術以外にもそういった知識はあった方がいいと思います。

ジュエリーなどは特別な日につけるという方も多いと思いますが、古谷さんにとってのシルバーアクセとは何でしょうか?

古谷尚人:

わくわくできる友達みたいな存在ですね。大きなフィギュアは持ち歩けないけど、指もとにいつも共に居られる楽しみがあります。子供心を忘れない、そんな存在です。
キャラ感やモチーフ物が好きなので、世間的に言う“ザ・ジュエリー”みたいなものや、ギラギラと宝石をちりばめるような物は今後も作ろうと思わないですね・・・。

柔らかいスカルはハイポリゴンのメッシュですが、機械的なマスクはZModelerのローポリで作成。
作業中はダイナミックサブディビジョンで進めます。 ディバイドはなるべくしない。→ ディバイドしてから、それを削除すると、メッシュが少し縮んでしまうためです。これはケージで膨らませても元の形状には戻らないのが理由です。 ZModelerで作っていると、トポロジーの流れ(割り方)につまずくことがあります。
その場合には、無理に一体化しないで、別体のメッシュにしてしまった方が楽です。

*ZModeler : ZBrush内でポリゴンモデリングができるブラシ機能です。

質問リスト内でカバーしていない話したい内容や、その他紹介したい、告知したい内容などはありますか?

古谷尚人:

告知になります。

夏期開催の大ベルセルク展 名古屋会場 ではストフリ作のベルセルクアクセサリーが販売されます。 

2022/7/24ワンフェスも出展します。当日版権アクセサリーも申請中です。 

そして、まだ言えませんが、今年はコラボ商品が数タイトルリリースになります。何のタイトルで、どんなアイテムが出るのか、楽しみにしていてください。

作業環境詳細

11th Gen Intel(R) Core(TM) i7-11700F @ 2.50GHz   2.50 GHz

メモリ 32GB DDR4 SDRAM(PC4-25600/16GBx2/2チャネル)

SSD WD 1TB Gen4 NVMe SSD
グラボ NVIDIA GeForce RTX 3060 Ti 8GB (HDMI x1DisplayPort x3)

Keyshot、Rhinocerosも所有

3Dプリンター

Phrozen Sonic mini 4K(メイン)
Form2
Phrozen Sonic mini 8K(納品待ち)

3Dプリンター 左 : Form2 右 : Phrozen Sonic Mini 4K

3Dプリンタ出力物を洗浄する環境

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