今回は初心者向けの解説記事として、ZBrush / ZBrushCoreの基礎に当たる、”ダイナメッシュ”モデルと”サブディビジョン”モデルの違いについて解説していきます。
そもそも”ポリゴン”って何?
まず、ポリゴンとは何か。について解説したいと思います。
3DCGにおけるポリゴンとは、以下の3要素で構成されています。
- 頂点 = “ポイント(バーテクス)”
- 頂点と頂点をつないだ線 = “エッジ”
- エッジをつないで出来上がる面 = “ポリゴン”
もちろん他にも様々な要素がありますが、今回は基礎的な解説ですので割愛します。

“頂点数” と “円(曲線)”の関係について
では、まず、3D空間上に”円柱”を用意しました。
上記画像の左側を見ていただくと、”円柱”と呼ばれている割にはどちらかといえば、”八角柱”に近いと思います。
3DCGでは、このようにそれぞれの”角”に頂点が置かれるため、画像の右側のように本当の意味での”円”柱に近づければ近づけるほど、頂点数を増やしていく必要があります。
例えば、これが滑らかなカーブであっても同じことです。


このように、滑らかなカーブ(曲面)をポリゴンで描く際には、細かく分けていく必要があります。
では、先ほどの円柱と、こちらのカーブ。少ない頂点で、より滑らかなほうをコントロール出来たら良いと思いませんか?
サブディビジョンというスマートな発想
そこで、3DCGにはサブディビジョンという分割方法があります。分割方法には様々な方式があり、ZBrushや、他の多くの3DCGソフトで採用されている手法は、”カトマルクラークサブディビジョン”というものです。
以下の画像をご覧ください。
左の”八角柱”の少ない頂点で、”上の階層”である右側の多い頂点を持つ”円柱”をコントロールしています。

このように下の階層の”八角柱”のポリゴンを細かく分け、上の階層の”円柱”を表現/コントロールしています。

サブディビジョンレベルという階層構造
ZBrushでは、この”サブディビジョン”を繰り返し、それぞれの階層でもコントロールでき、”上の階層”で加えた変更内容を”下の階層”へ、”下の階層”で加えた変更内を”上の階層”、双方に反映できます。
大きな変更を加える際、”粗い”モデルを利用して下の階層で作業し、ディテールを加える際には、”密度の高い”モデルを上の階層で作業するといった行き来が可能となります。
そのため、この多階層のサブディビジョンを”サブディビジョンレベル”と呼びます。

粘土造形で例えた場合―人を作る際にまず、針金と粘土で土台を作り上げ、筋肉などの大まかな土台を仕上げますよね?
その後細かなディテールを作り、さらに造形をしている最中に、針金とディテールの調整それぞれへ往復ができるようなもの。とお考え下さい。
下の階層の腕の位置を変えた後に、上の階層に戻ると、このように腕の位置が変わります。

ZBrushでのサブディビジョンレベルの使い方は簡単で、ツール>ジオメトリ内に存在するディバイドをクリックすることで、現在のモデルに、サブディビジョンの階層を加えます。
すると、このようにスライダーを動かすことで上の階層、下の階層それぞれに行き来が可能となります。

このように”粗い”状態と”密度の高い”状態を行き来する作業プロセスをZBrushでは”マルチレゾリューション メッシュ エディティング(多解像度のメッシュ編集)”と呼んでいます。
サブディビジョンレベルの特徴 まとめ
1.少ない頂点数でより多くの頂点数を持つモデルをコントロールできます。
2.階層構造となっているため、大きな変更を加える場合には下の階層に行くことで、素早く、上の階層のディテールを維持しつつ変更が加えられます。
3.データ容量的にも、動作的にも軽くなり、サブディビジョンレベルが無いとできない作業も出てきます。
ダイナメッシュとは
サブディビジョンレベルは下のポリゴンの階層を土台にしている”階層構造”であるという特徴から、上下の階層を壊してしまうような改変が加えられません。
そのため、モデルの耳を取っ払いたい。肩から下を無くしたい。というより大きな変更操作をしやすくするために、ダイナメッシュが作られました。
ダイナメッシュは粘土を盛ったり切り落としたりするような大きな変更を素早く実行できるのが特徴です。
例えば、以下の画像のように、モデルの形状を変更すると、ブラシの効果範囲に存在する頂点も動きます。


このように、モデルの耳を伸ばしてみると、モデルの一部の頂点に歪みが発生します。その後、掘り込みを加えても支える”頂点”という土台がないため、掘り込みが安定しません。
ですが、ダイナメッシュを利用して、モデル全体を”均一”のポリゴンにすることで、角を伸ばしたことで”不均一”になった部位に頂点が追加され、掘り込みを支える頂点を補えました。

ダイナメッシュではこのように、土台となるモデルのポリゴン構造を均一にすることで、土台のポリゴン構造を気にすることなく作業ができます。大きな変更を加えることや、その後の作業の土台となるモデル(ベースメッシュ)を作ることを得意としている機能です。
ダイナメッシュの使い方は簡単です。
ツール>ジオメトリ>ダイナメッシュの下の解像度で必要な密度を指定し、ダイナメッシュをクリックすることで、ダイナメッシュモードに切り替わります。その後、モデルのポリゴン構造を均一にしたい場面で、キャンバス上でCTRLを押しながら左ドラッグをすると、モデルのポリゴンが均一になるよう更新します。
ダイナメッシュの特徴 まとめ
1. モデルの形状が大きく変わるような変更が容易に行えます。そのため、形状や、アイディアを模索する際に非常に便利です。
2.モデル全体のポリゴンが均一になるように調整します。そのため、土台となるポリゴン構造を気にせず作業できます。
サブディビジョンレベルとダイナメッシュの使い分け
サブディビジョンレベルは大まかな形状の調整をしながら、ディテールの調整ができます。
ダイナメッシュはラフな形状作成やアイディア出しを得意としています。土台のポリゴンを気にせずごりごりと彫ることができます。
基本的には、ダイナメッシュで、ある程度の形ができたら、モデルのポリゴンの状態をきれいにし、サブディビジョンレベルを加え、ディテールなどを製作していきます。
ZBrushには、モデルの構造(トポロジー)をソフトウェアが自動的に作り変えてくれるZリメッシャーという機能もあります。
これでダイナメッシュを利用してラフ形状を作り、Zリメッシャーを使い、土台をきれいにし、その後サブディビジョンを追加し、階層を行き来しながらディテールを加えていきます。
ZBrushCore2021より追加されたZリメッシャーには一部機能制限があり、ポリグループやクリースの保持、およびポリゴン数の指定が行えません。あわせて、一度Zリメッシャーを利用後、ディテールを投影しなおすという機能が含まれていません。
ですが、ダイナメッシュで基本形状を作成、Zリメッシャーを利用して土台を整え、ディバイド後ディテールを彫りこんでいくという工程に変わりはありません。
ダイナメッシュのモデルをZリメッシャーを利用してきれいにする方法
こちらは、より具体的な操作となりますので、ぜひ解説動画をご覧ください。
まとめ
このように双方の機能には、それぞれメリットがあり場面に応じた使い分けが必要となります。
これら2つの状態をきっちりと使い分けできたら、ZBrush初心者の若葉マークを胸のパッチからはがす時です。
ぜひ、ZBrushのスカルプトをお楽しみください。